2019.07.26
シリーズ・徒然読書録~黒木亮著『国家とハイエナ』
あれもこれも担当の千葉です。
読書は好きで、常時本を持ち歩く癖が付いてしまいましたが、読み方は極めて
大雑把、何かしら記憶のどこか、心の片隅にでも蓄積されていれば良いという
思いで雑然と読み流しています。暫くするとその内容どころか読んだことさえ
忘れてしまうことも。その意味で、読者の皆様には退屈でご迷惑かとも恐縮し
つつ、ブログに読書録なるものを記してみるのは自分にとって有益かも知れない
と思い、始めて見ました。皆様のご寛恕を請うところです。
徒然なるままに読み散らす本の中から今回取り上げるのは、黒木亮著『国家と
ハイエナ』(幻冬舎刊)。
財政破綻した国家のデフォルト債権をタダ同然の安値で掻き集め、欧米の裁判
所に元本に遅延利息まで乗せて返済を求めて訴訟を起こし、法律論を駆使して
勝訴し国有財産を差押え、投資額の何十倍もの巨額・破格の利益を貪るハイエナ・
ファンドが存在します。日本ではあまり報道されていませんが、国際金融の現場
では、破綻国家の腐敗した権力者と、ハイエナ・ファンドと、NGOの三つ巴の
戦いが繰り広げられており、コンゴ共和国債、リベリア債務、ペルー国債、ザン
ビア債務などなど、本書にあることはすべて現実に起こったことだそうです。
著者の黒木氏の、銀行・証券・商社での長い勤務経験が可能にした金融ドキュ
メンタリー小説で、臨場感があり、説得力があります。ただ、同時に国際金融の
専門的法知識が飛び交い過ぎて、いささかスピード感に欠け、煩わしさを禁じ
得ませんでした。
腐敗した権力者が自らの私利を貪り、国家を破綻させて行く。そこに付け込んで
暴利を貪るハイエナ・ファンド。その代償はみな弱者である国民に回ってしまう。
そこで無辜の民へ救いの手を差し伸べるべく、NGOが反ハイエナ法の制定を働き
掛ける。こうして三つ巴の構図が出来上がります。
重病の妻の医療費のためにハイエナ・ファンドの手先に成り下がってしまった
NGO職員のその後の悲惨な人生などを織り込みながら、物語が展開し、ついに
イギリス議会で反ハイエナ法が成立するも、ハイエナ・ファンドはこの法律が
対象とする最貧国向け債権以外の国家債務に触手を伸ばして行く。ギリシャ、
アルゼンチン。いたちごっこを思わせる終わり方が、この問題の深刻さを物語
っているようです。
最後に。小説の中で大活躍をするNGOの首領は日本人女性で、実在の北沢洋子
さんという、この世界のヒロインだということを知り、少し救われた思いが
しました