2018.06.28
シリーズ・徒然読書録~本川達雄著『ウニはすごい バッタもすごい』
あれもこれも担当の千葉です。
読書は好きで、常時本を持ち歩く癖が付いてしまいましたが、読み方は極めて
大雑把、何かしら記憶のどこか、心の片隅にでも蓄積されていれば良いという
思いで雑然と読み流しています。暫くするとその内容どころか読んだことさえ
忘れてしまうことも。その意味で、読者の皆様には退屈でご迷惑かとも恐縮し
つつ、ブログに読書録なるものを記してみるのは自分にとって有益かも知れない
と思い、始めてみました。皆様のご寛恕を請うところです。
徒然なるままに読み散らす本の中から今回取り上げるのは、本川達雄著『ウニ
はすごい バッタもすごい』(中公新書)。
『いきものの体のつくりは、かたちも大きさも千差万別。バッタの跳躍、クラゲ
の毒針、ウシの反芻など、進化の過程で姿を変え、武器を身につけてきたいきもの
たちの、巧みな生存戦略に迫る。』という、表紙裏のコピーや、新聞広告に惹か
れて読んでみました。
動物界の34の『門』のうちの5つ、
刺胞動物門(サンゴ)
節足動物門(昆虫)
軟体動物門(巻貝)
棘皮動物門(ヒトデ、ナマコ、ウニ)
脊索動物門(ホヤ)
が取り上げられています。新書版なので、かなり簡素に判り易く書かれては
いますが、それでも結構生物学の入門書・教科書的な感じ(お堅い感じ)も
します。そんな中から、面白かった記述を羅列・要約してみます。
『海で最も生物多様性が高いのがサンゴ礁。サンゴ礁の面積は海洋の0.2%
だが、海水魚の三分の一が、全海洋生物の四分の一がサンゴ礁にいる。』
サンゴ個体の中に相利共生している褐虫藻による光合成によって生じる有機物
のおかげと解説されています。
その褐虫藻が減るとサンゴは白くなり(白化)、光合成産物減ってサンゴは
死滅してしまいます。活性酸素の除去が不足するからだと言われています。
サンゴ礁の白化の原因としては、異常な高温・低温、強すぎる光、長期の暗雲、
大雨による塩分低下などが挙げられていて、海水温が1~2℃変化するだけで
白化してしまうとのこと。
1998年には千年に一度のエルニーニョによって、世界のサンゴ礁の16%
が破壊され、最も深刻な影響を受けた沖縄ではその8割が破壊されたそうです。
また、2016年には、日本最大のサンゴ礁、石西礁湖(石垣島と西表島の間)
の7割が白化により死滅しました。単純な計算をすれば、もし今のようなペース
が続いたら、なんと2050年には世界全てのサンゴ礁が死滅してしまうかも
知れないとのことです。
ヒトデ・ナマコ・ウニのような棘皮動物門に共通した特徴は、管足という多数の
足と、星形・5角形(五放射相称形)。この5角形はヒトデでは判り易いですが、
ウニも、トゲを取り除いてしまうと、星形が一目瞭然です。ナマコも口側から
見ると5角形をしています。
なぜ『五』なのか(動物では珍しいが、植物では五弁の花が多い)?には諸説
あって定説がないようですが、『(より多く)動く動物には左右相称形が適して
おり、(あまり)動かない動物には円形・放射相称形が適している。』
さて、ホヤに代表される脊索動物門。『脊索』とは動物の体の主軸を支える柔ら
かな棒状の組織ですが、これが進化したものが『脊椎』で、何と我々人間もこの
脊索動物門の仲間なのです!わぁ、ビックリした~!
脊索動物門
頭索動物亜門 ナメクジウオ
尾索動物亜門 ホヤ、サルバ
脊椎動物亜門 無顎上網 顎のない魚、ヤツメウナギ
顎口上網 軟骨魚類網 サメ、エイ
上鰭(き)網 魚の大半
肉鰭網 シーラカンス、肺魚
両生網
爬虫網
鳥網
哺乳網
これって下から順に人類・哺乳類に近い順ということですよね!
脊索から脊椎に進化した結果、運動能力が飛躍的に増したが、初期の進化の理由
は、陸では不足しがちなリン(P)やカルシウム(Ca)を蓄えるためのもの
だったそうです。
動物には34の門があり、そのうち13門に陸上生活が見られるが、大半は土
の中や湿った場所。乾燥のリスクのある陸上で生活をしているのは、節足動物と
鳥と四足の動物だけ。水から離れても生命を維持できるようになるには、格別の
仕組みや悠久の歳月が必要だったのですね。