2017.04.11
シリーズ・徒然読書録~高橋真理子著『人はなぜ星をみあげるのか 星と人をつなぐ仕事』
あれもこれも担当の千葉です。

 

読書は好きで、常時本を持ち歩く癖が付いてしまいましたが、読み方は極めて

大雑把、何かしら記憶か心のどこか片隅に蓄積されていれば良いという思いで、

雑然と読み流してしまいます。その意味で、読者の皆様には退屈でご迷惑かと

も恐縮しつつ、ブログに読書録なるものを記してみるのは自分にとって有益か

も知れないと思い、始めてみました。皆様のご寛恕を請うところです。

 

徒然なるままに読み散らす本の中から今回取り上げるのは、高橋真理子著、

『人はなぜ星をみあげるのか~星と人をつなぐ仕事』(新日本出版社刊)。



オーロラの降るアラスカの原住民の写真を撮る星野道夫さんに憧れ、宇宙と

人との繋がりに興味を持ち、大学で地球物理学の世界に飛び込んだ著者が、

公務員としてプラネタリウムを担当したら、どんな活動の数々を紡ぎ出すのか。

 

星を眺めながら考えた言葉を一句ずつ、一句ずつ公募し、皆で作詞した宇宙連歌

に財津和夫が曲をつけ、平原綾香が歌った『星つむぎの歌』。90分で地球を

一周してしまうため、一日に16回の昼夜を繰り返すスペースシャトルの宇宙

飛行士の土井隆雄氏が目覚まし曲として宇宙に持って行きました。



『見えていても心がなければ見えないと言ったのは星の王子さま。見えないけれど

確かに存在するものを詠ったのは金子みすゞ。見えないものに価値を置ける社会

に惹かれると言ったのは星野道夫。見えている星はほんの一部。見えない星の方

が圧倒的に多い。』目の見えない人、視覚障碍者にも宇宙を、星を、プラネタリウム

を知って欲しい!と始めたプロジェクトは、星空の存在やその奥にある宇宙の

イメージを持って貰おうと、言葉や音楽のみならず点字も駆使。これが点字も

併用したユニバーサル・デザインの絵本『ねえ おそらのあれ なあに?』に

結実します。

 

『戦場に輝くベガ~約束の星を見上げて』は、『高度方位暦』の存在を知り、

戦争経験者にインタビューして創り上げたプラネタリウム番組です。戦時中、

天文航法に必要な『高度方位暦』の計算に従事する久子と、それを用いて敵地

へと爆撃機を導く偵察員の和夫。沖縄戦出撃前に和夫が久子に送った最後の

手紙。『星が武器としてではなく、希望の光として輝ける日が来ることを祈

っています。』

 

これが反響を呼んで、メイキング・ストーリー、『終わらない物語』も制作。

テーマは、『男と女、加害と被害、当時と今、全ての対を引き裂くのが戦争で、

全ての対を繋ぐことができるのが星』。



プラネタリウムに行きたくても行けない人たちには、『出張プラネタリウム』や

『病院がプラネタリウム』を実現させてしまいます。

 

著者のその素晴らしい感性と、驚くべき企画力と、凄まじい行動力にはただただ

頭が下がる思いです。

 



折しも、この本を読んでいる時に、盲導犬支援のためのチャリティ・プログラムが

あって参加させて戴きました。その中で、ほんの少しの支えがあれば、視覚障碍者

の方でもコンサートに行って音楽を楽しめることも知りました。また、視覚障碍者の

ケアをしている看護師の方が話されたことがとても心に沁みました。それは、

視覚に障害を負った方の心理的な状態は時間と共に変わって行く。障害者の方が、

ショック⇒否定⇒混乱・怒り⇒努力⇒受容の、どの段階にいるかで、適切な対応・

声の掛け方というものも変わってくるということでした。



(盲導犬育成機関、富士ハーネスさんのHPより)

 

以前、所属するロータリー・クラブでお呼びして盲導犬のデモンストレー

ションをして戴いた時のことですが、盲導犬にとっての制服である

『ハーネス(綱)』を着けている時の犬は、何事にも動ぜず命じられた事

を守り通す『オトナ』なのですが、ひとたびハーネスを脱げば、撫でて

あげれば喜びはしゃいでこちらの顔を舐めてくるような遊び好きな

『甘えん坊』であることにビックリしたことがあります。それ程の

『プロフェッショナル』だということですね。

 

とはいえ、街で盲導犬に出会ったら、目をあまり見つめないようにし、

盲導犬の気を惹くような(気を逸らせてしまうような)ことをしないで

あげて下さい、とのことでした。



少し脇に逸れてしまいました。東日本大震災のあった3.11の夜、大停電の

東北地方の夜空は満天の星空だったそうです。著者に寄せられた被災者の言葉

は、星と人との繋がりを強く感じさせるものであると同時に、深く胸を撃つ

ものがあります。最後にこの言葉たちを列記して終わります。

 

ー とんでもない満天の星空が広がって、それを見た瞬間、『あぁ、私、生きて

いる・・・』

ー ふと、あの夜の星空は亡き人が道に迷わず天国へ行けるようにと導く明りだ

ったのではないかと思った。

ー こんな大変な時なのに、思わず『星がきれい』と思ったことを覚えています。

人は、どんな困難な状況の中でも、輝く星を見て『美しい』と感じる心が残っ

ているもんだなと自分でも驚きました。その心が残っているうちは大丈夫かも

しれないと思いました。

ー 見たこともない美しい星空に、ためていた涙が一気にあふれだした。仙台は

こんなに星が見える街だったんだ。子どもはこんな時でも、それに気付くこと

ができるんだ。・・・同時に、こんな悲惨な状況でも、美しいものを見つけら

れるすてきな子どもたちを、何としても守っていかねばと、弱気になっていた

心に活を入れられた忘れられない夜だった。

ー あの夜は、星が怖いくらい光っていた。哀しかったけれど、停電であかりが

なくても星はすごい光っていた。そういう存在になれたらいい。