2013.07.22
徒然読書録②~梶村啓二著『野いばら』
あれもこれも担当の千葉です。
読書は好きで、常時本を持ち歩く癖が付いてしまいましたが、読み方は極めて大雑把、
何かしらからだのどこかに蓄積されていれば良いという思いで、雑然と読み流します。
その意味で、読者の皆様には退屈でご迷惑かとも恐縮しつつ、ブログに読書録なる
ものを記してみるのは自分にとって有益かも知れないと思い、始めて見ました。皆様
のご寛恕を請うところです。
徒然なるままに読み散らす本の中から気に入った本、今回は梶村啓二著、
『野いばら』を挙げてみます。
妻と別れ日常に意味を見失った種苗商社マンが、英国の郊外で偶然に巡りあった
『野いばら』の群生と古い軍人の手記。幕末の横浜での英国軍人の、野いばらの花
のような清楚な日本人女性への想いが、日本原産種のこの花を遥か海を越えて欧
州にもたらした。自らの役割と想いとの狭間で苦しみながらも激動の時代を精一杯
生き抜いた2人の物語が、時代を超えて、改めて明日へ向かっての一歩を踏み出す
現代の商社マンの再生をもたらす。
バラ科バラ属のつる性落葉低木、『野茨(ノイバラ)』。5~6月に開花し、香りが良い
ため香水の原料としても使われる。雑草のようなこの花が、欧州で観賞用の品種改
良の最も早い段階で掛け合わせに用いられたと言われ、現代の多くのバラの一方の
起源がこの日本原産の野茨と言われているそうです。この小説では、そんな野いばら
の西洋と日本の架け橋としての象徴性と清楚な日本人女性としての象徴性が、小説
の仕掛けとして用いられました。
巧みな小説であると同時に、薫り高く白い清楚な花のように品の良い小説であると
感じました。