2013.09.16
シリーズ・ちょっと気になるデザイン~和傘と欄間
あれもこれも担当の千葉です。
敬老の日を含む今週末は、台風18号に、自然の脅威をまざまざと見せ付け
られました。
東日本では、小笠原から沖縄を経ずに北上する台風は要注意です。昭和33
年の狩野川台風しかり、昭和34年の伊勢湾台風しかり。今回の18号も、小笠
原南方にある時は995hPaと、勢力の弱い台風でしたが、愛知県東部に上陸
した時には970hPaと、大型の台風に勢力を増していました。
近畿・東海・北陸では、一日の降雨量が観測史上最高を記録した地点が多く、
初めて『特別警報』が発令されるなど、雨による被害が多かったようです。京都
は嵐山の渡月橋が冠水し、桂川が氾濫した映像は衝撃的でした。一方で関東
では、突風による被害が多く、台風18号は広範囲に爪痕を残して行きました。
被害に合われた地域の方々に心よりお見舞い申し上げますとともに、一日も
早い平穏な日常への復旧が叶うよう祈念申し上げます。
さて、半年ほども前の話ですが、高校を卒業した姪が金沢に行って来ました。
目的は和傘。
和傘職人も数少なくなっているようです。ネット検索でざっと見たところ、京都、
金沢、高山、岐阜、米子。京都でも一軒、金沢でもお1人しか残っておられない
とのことです。姪はこの金沢の最後の和傘の匠、松田弘翁を訪ねて、念願の
一本を手に入れて来ました。
鮮やかな色彩の蛇の目です。傘の部分には紅葉の葉が漉き込まれ、内側の骨
にも色鮮やかな糸で千鳥掛けが施されています。まさに竹と和紙、蝋、糸が織り
なす伝統の逸品だと思いました。
この金沢の伝統技能を見て、25年ほど前に妻と金沢を訪れた時のことを思い出
しました。
美術館で見た欄間の透かし彫りに感激し学芸員に尋ねたところ、まだお隣の富山
県に欄間や建具の彫刻を生業とする匠たちの町があると聞き、井波町(現、南砺
市)まで足を伸ばしてみました。一枚の板を、表と裏から違う意匠で彫り抜くその
技に痛く感激しました。
あれから25年ほど経った昨年、富山市に出掛けた折に人に尋ねてみたところ、
今では欄間などの建具の需要が減ってしまい、匠たちは高級な木彫人形を作っ
ていると聞き、残念に思いました。
私どもが建てる住宅にも、和室がめっきり減りました。暮らし方の欧風化が更に
進んでいます。我々日本人が求めなくなり需要が減ることで、供給側の伝統の
匠技が生き残る余地が減るという構図です。よく伝統工芸の担い手が途絶えて
しまうことを嘆くテレビ番組を目にすることがありますが、伝統工芸の担い手、即
ち供給側の原因で伝統工芸が衰退して行くことは実は稀で、多くは我々が求め
なくなるために、即ち需要がなくなるために担い手が途絶えてしまうのではない
でしょうか。
残念なことではありますが、こうした中で和風の伝統の匠技を受け継いでいくこと
は、私達の想像を遥かに超えて難しいのでしょう。