2013.10.16
シリーズ・講演聴講抄録~『ヒトは何歳まで生きられるのか~老化研究の最前線』
あれもこれも担当の千葉です。
折角秋らしく涼しい日々にホッとしていたところが、夏が戻ってきたような陽気です。
現場で鉄筋組みをしてくれている職人さんと話をしてみると、このところやっと一日
シャツを着替えないで済むようになったのに、夏のように一日に何度も着替えるこ
とになってしまった、と予期せぬ暑さに苦笑いされていました。ここ、静岡県の三島
市でも昨日は31.9℃と、10月の気温としては観測史上初の記録でした。気温変
化の激しさに体調を崩されぬよう、皆様どうぞご自愛下さいませ。
さて、暫く前になってしまいましたが、重陽の節句が過ぎた頃、まだ暑さも厳しい
9月の中旬に、所属する経済団体である経済同友会の事業で、三島にある国立
遺伝学研究所を見学し、細胞遺伝研究部門の小林武彦教授のご講演を聴講す
る機会がありました。
国立遺伝学研究所の構内には沢山の種類の桜の木があります。写真は『秋桜
(アキザクラ)』。秋桜と書くと『コスモス』を連想してしまいますが、これは正真正銘
9月に開花する桜で、少し判り難い写真で恐縮ですが、確かに花が咲いていました!
国立遺伝学研究所は、遺伝学研究では世界有数の拠点です。ゲノムに関する研
究成果を共有化すべく、日・米・欧の3拠点に世界中のゲノム情報を集約するので
すが、その一つが三島にある訳です。なんとも凄いレベルの話で、三島市民として
はとても誇らしく感じてしまいます(ちっとも自分が偉い訳ではないのに!)。
小林教授の『ヒトは何歳まで生きられるのか』と題した講演の概要を、自分用のメモ
のつもりで記してみます。従って、誤りや不適切な記述があるかも知れませんが、
その文責は偏に私にあることを申し上げておきます。
・寿命を決めるものの探求は、ヒトに限らず生物に共通のファクターを追求すること
・具体的には、『長寿遺伝子』を探すことと、『老化のメカニズム』を解明すること
・寿命の法則① 同属の中では寿命は身体の大きさに比例する
例えばネズミで言うと、ハツカネズミ2年、ハリネズミ10年、アルパカは20年
・寿命の法則② 成長(成熟)年齢の5~6倍が寿命
例えば ヒト 20年 × 5~6 = 100~120年
ギネスによると1位は122歳、2位は120歳(泉重千代さん)
・統計からすると、『長寿の家系』は存在する(遺伝的形質)
従って寿命を決める遺伝子(『長寿遺伝子』)があるはあず
・長寿の人のゲノムの研究から、エネルギーの生産に関わる器官、ミトコンドリア
に特徴があること、活性酸素が関わりを持っていることなどが解って来た
・病気の人(ヒト早期老化症=ウェルナー症候群)の研究から、 ゲノムの安定性
に関する遺伝子が存在することが解って来た
ヒトの細胞は約60兆個、これが日々新陳代謝を繰り返している
即ち、膨大な数のDNAの正確なコピーが繰り返されている
時にコピー・ミスがあるが、多くはDNA修復酵素により修正される
・特にリボゾームRNAと言われる情報伝達遺伝子は150リピートと長く不安定な
ためコピー・ミスが起こりやすいが、『SIR2(サーツー)遺伝子』がこのミスを修
復し安定化させる
このSIR2遺伝子を壊すと寿命が半分に、これを増やすと寿命が30%延
びることが解った(酵母菌での実験、他の生物でも同様の効果を確認)
・SIR2遺伝子の働きを強めるには
①カロリー制限・・・酵母、線虫、マウスでは効果確認
サルではまだ
②ポリフェノールの多量摂取
・ガン研究は、老化防止の研究が同時並行していくべき
単なる寿命ではなく、健康寿命を延ばす必要があるから
『カロリー制限』のくだりでは、思わず自分のお腹周りを気にし、コーヒーやチョコ
レート好きなため『ポリフェノール多量摂取』のくだりではホッと一息。私は随分と
レベルの低い反応しか示せませんでしたが、健康寿命が長くなる研究が更に進
むことを願って止みません。