2016.08.04
シリーズ・徒然読書録~朝比奈あすか著『少女は花の肌をむく』
あれもこれも担当の千葉です。

 

読書は好きで、常時本を持ち歩く癖が付いてしまいましたが、読み方は極めて大雑把、

何かしらからだのどこかに蓄積されていれば良いという思いで、雑然と読み流します。

その意味で、読者の皆様には退屈でご迷惑かとも恐縮しつつ、ブログに読書録なる

ものを記してみるのは自分にとって有益かも知れないと思い、始めてみました。皆様

のご寛恕を請うところです。

 

徒然なるままに読み散らす本の中から今回ご紹介するのは、朝比奈あすか著『少女は

花の肌をむく』(中央公論新社刊)。これも図書館の新刊案内の棚にあって、表紙の絵に

惹かれて手に取ったものです。音楽(LP)で言えばジャケ買いですね。それと、以前にも

この著者の就活をテーマにした小説『あの子が欲しい』の読後録を書きました。余り印象

が良くなかったのですが、そこは群像新人賞受賞者だけに、ちょっと期待するものは

ありました。



小学生の頃、集団の中での位置が自分の価値を決めるように思えて他人の目が

気になって仕方なく、人気者に嫌われないようにとばかり思っていた子、人の目な

ど気にならなず、それが人気者の気に障ってしまった変わり者の子。二十歳になっ

てようやくお互いに気の置けない関係を築けるようになった同級生の物語。

 

小学校5年生(十歳)の同級生たちが二十歳で再び出会うという、前後編の仕立て。

本の帯のコピーは、『女子のグループ意識、美醜の差、異性の視線・・・思春期の少女

たちは、獣道をかきわけ強くなる』。そりゃあ、男性が理想化するような乙女チックな成長

過程ばかりではなく、ドロドロした部分は男の世界と同じようにあるとは思いますが、

『獣道』ですか。いかばかりか凄まじい世界かと思いましたが、やはりとても上品な作品

で、その意味では肩すかしでした(二作続けての)。でもきっと、そうそう、こんなこと

あったあった、わかるわかる!と共感を持つ人も多いのかも知れません。

 

読んでいて心にとまった文章を一、二記して終わりにします。

 

『売るとされるのはたいてい女で、その構図に甘んじているのも女で、理由をつけたがるのも

女だ。』

 

『気持ちのあり方だけで、世界は全然違うものに見えてくるのかもしれない。けれど、もう、

気持ちのあり方もものの見方も、きっともう変えることなんかできない。』