2016.06.15
シリーズ・徒然読書録~ネコ・ねこ・世界から猫が消えたなら
あれもこれも担当の千葉です。
読書は好きで、常時本を持ち歩く癖が付いてしまいましたが、読み方は極めて大雑把、
何かしらからだのどこかに蓄積されていれば良いという思いで、雑然と読み流します。
その意味で、読者の皆様には退屈でご迷惑かとも恐縮しつつ、ブログに読書録なる
ものを記してみるのは自分にとって有益かも知れないと思い、始めてみました。皆様
のご寛恕を請うところです。
徒然なるままに読み散らす本の中から気に入った本、今回は3冊。キーワードは『猫』。
まずは、岩合光昭著『岩合さんの好きなネコ』(辰巳出版刊)から。
岩合さんといえば、大自然の中での動物写真で有名ですが、猫や犬の写真も多く、三島
にある佐野美術館でも何度か猫・犬の写真展を開催し、多くのファンが駆けつけました。
この表紙を飾る子は、ちょっと(かなり)おデブちゃんです(親近感!!!)。
この子は嫌々付き合わされているかのような、投げやり感たっぷり。
こちらは仲の良い双子でしょうね。動きがピッタシ。
炬燵で丸くなるはずの猫が、雪の中を犬のように駆け回っています。
続いては、ケニア・ドイとじゃまねこ編集部編『じゃまねこ』(マイナビ刊)。
困らせ上手な猫たちの写真集です。
パソコンの上。読んでる新聞の上。わざわざ人を困らせに来ますよね。そんなところを
見てないで自分と遊んでよと言っているのでしょうか。
こりゃテレビもビデオもエアコンも使えません!
キャプションに、空気読んで下さい、とありますが、空気読まないのが猫ちゃんです!
最後は、川村元気著『世界から猫が消えたなら』(マガジンハウス刊)。ファンタジー啓蒙
小説(そんな分類があれば、ですが)といった類のものです。因みに帯には感動的、人生
哲学エンタテイメント、とあります。
著者の川村元気氏は、映画プロデューサーとして『電車男』、『告白』、『悪人』、『モテキ』、
『おおかみこどもの雨と雪』などを制作し功成した方で、この小説は氏の初の著作。まだ
見ていませんが、佐藤健さん、宮﨑あおいさん主演で映画化もされました。
余命あとわずかと宣告された30歳の郵便配達員の前に悪魔が現れ、何か一つこの世から
消す代わりに一日の寿命を得るという取引を受け容れてしまいます。
余りに『軽い!』と何度も投げ出してしまいそうになりながらも、なかなか分析鋭く哲学的な
ところもあって読み通してしまいました。そんな文章を幾つか書き出して読書録とします。
『人間は何も失わずに、何かを得ようとする。それならまだいい。今は、何も失わずに、何も
かも手に入れたい人ばかりだという。でもそれは奪う行為に他ならない。だれかが得ている
そのときに、だれかが失っている。』
『携帯はその登場から、たった20年で人間を支配してしまった。なくてもよかったものが、
たった20年で、なくてはならないものかのように人間を支配している。人は携帯を発明する
ことにより、携帯を持たない不安も同時に発明してしまった。・・・人間は何かを生み出す
たびに、何かを失ってきたんだ。・・・いま自分の携帯の中に入っている、あまたある番号の
中で記憶している番号などない。・・・携帯に自分の絆と記憶を完全に任せてしまっている。』
『すぐに伝えられないもどかしい時間こそが、相手のことを想っている時間そのものなのだ。』
『人間はわざわざ自分たちを制限する時間、そして年月、曜日という決まり事を発明した。
さらに、その時間という決まり事を確認するために、時計を発明した。決まり事がある、と
いうことは、同時に不自由さを伴うということを意味する。だが、人間は、その不自由さを
壁に掛け、部屋に置き、それだけでは飽き足らず、行動するすべての場所に配置している。
挙句の果てには自分の腕にまで時間を巻きつけておこうとする。』
『自由は、不安を伴う。人間は、不自由さと引き換えに決まり事があるという安心感を得た
のだ。』
主人公は、飼っている猫を消してしまうことがどうしてもできずに、自分を消すことを選びます。
そして多くのことに気が付きます。
『本当に大切なことを後回しにして、目の前にあるさほど重要ではないことを優先して日々
を生きてきたのだ。目の前のことに追われれば追われるほど、本当に大切なことをする時間
は失われていく。』
『私が死ぬまでにしたいことは、全部あなたのためにしたいことだったのです。』
『自分が幸せか、不幸せか。自分ではよく分からない。ただひとつだけ分かることがある。
自分が思うだけで、人はいくらでも幸せにも、不幸せにもなれるということだ。』
『何も考えないでただ今の世界を生きている日常と、その世界を支えている無数の事柄や
不思議な仕組みについて想像を及ばせた上で生きている日常はきっと大きくちがう。』
『人は自分の死を意識した時から、生きる希望と死への折り合いをゆるやかにつけていく
だけなんだ。無数の些細な後悔や、叶えられなった夢を思い出しながら。でも、その後悔
こそが美しいと思える。それこそが僕が生きてきた証だからだ。』