2020.05.29
三島の風景探訪 ~その1~
はじめまして。設計部の野呂です。
弊社の地場である三島・沼津・伊豆地域の身近な「風景」について、観察記録を投稿したいと思います。
さて今回は、三島の境川周辺です。境川は清水町との境を流れる一級河川です。
玉川池(丸池)などに湧く水を水源として南に流れ下り、狩野川に合流しています。
カニ、エビ、ウナギなどが豊富で、かつては川漁が盛んに行われていたようです
(参考:三島郷土資料館HP)。
河床には三島梅花藻が自生し、両岸にはケヤキ、アオキ、ガクアジサイ等様々な植物が
水面ぎりぎりまで枝葉を伸ばして連続しており、質の高い水辺環境が保たれています。
また、周辺には趣がある農家住宅が多く、「石蔵」が散見されます。
東北出身の私の目には、外壁を漆喰やなまこ壁で仕上げた「土蔵」とは異なる建ち姿が極めて新鮮に映ります。
石材は西伊豆から伊豆半島南端にかけて産出する伊豆軟石(凝灰岩)が使われているようです。
一説には下田が開港した嘉永7(1854)年以降に広まったと考えられています
(参考:椿原靖弘著「石蔵と土蔵からみる清水港の近世・近代史」(日本エンジニアリング学会誌、2014年))。
何を貯蔵する目的だったのか。なぜ凝灰岩が選ばれたのか。なぜこのような形態なのか。
深めれば深めるほど面白そうです。それは、また別の機会に。
この三角屋根の小さな建物から、この土地に暮らしてきた人と自然との長い関り合いを想像させてくれます。
維持なさる持ち主の方々のご苦労は多いと思いますが、この地域の風景の要素であり続けてほしいと願うとともに、
次代へ向けての活用に際して、わたしどもも一助を担えればと思います。
土地の風景の一つひとつを観察することは、設計に携わるものとして、大変重要だと考えています。
今後も三島・沼津・伊豆地域の「風景」について、実際に歩いて観察し、投稿していきたいと思います。
少しでも皆さんにとって当たり前の風景を見直すきっかけとなりましたら幸いです。