2016.03.14

春寒の雨

あれもこれも担当の千葉です。

ひと雨ごとに暖かくなると判ってはいるものの、やはり春寒の日の雨は冷たく感じます。

ここ一、二回の雨で、折角咲き揃った梅の花もあらかた散ってしまいました。



それでもやはり春らしさは募っていて、



雪柳の蕾が幾つか割れ、



柊南天も咲き出しました(今年は葉が焼けたよう)。

傘を畳むにも手が濡れてしまいますね。当社1階の『わくわくプラザ』入り口には

雨の日用のお手拭きタオルを用意しました。



箱根の現場は雪だそうです。車の運転にはお気を付け下さい。

早く春らしい春が来ますように。
2016.03.11

シリーズ・新聞記事より~東日本大震災5年・問いかける言葉

あれもこれも担当の千葉です。

東日本大震災より5年。会社の会議室のテレビを呆然と眺めていた金曜日の午後。

地震・津波・放射能汚染からの復興を考える時、もう5年も経ってしまったという驚きは、

同時にまだこれだけしか復興が進んでいないのかという無念さと背中合わせです。

被災された方々、未だに不自由な暮らしを強いられている方々に、改めてお見舞いを

申し上げます。

先週、日経新聞の最終面に、『問いかける言葉 東日本大震災5年』という連載が組ま

れました。5人の作家・評論家・学者の問いかけは、歓迎すべき歳月の経過という癒し

ともに、忘却を戒め、改めて忘れてはいけないことを厳しく提議しています。



①哲学者 鷲田清一氏

死者との距離を考える時、復興という社会的時間とは別の、人間の心の時間という

ものがあると指摘する氏は、京都市芸大の学長も勤め、若い世代の行動力に期待を

寄せています。

『今の美大の卒業生は社会とリンクした活動を始める人が多い。彼らはどんどん人と

交わり、お金を使わず自分の手でモノをこしらえ、面白がって社会を変えようとする

タフさを持っている。・・・現代社会はあまりにも複雑で自分たちのものだという感覚が

持ちにくい。だから自ら動かせるシステムを作りたいと思うのだろう。震災を契機に広

がった感覚だと思う。』



②作家 池澤夏樹氏

『台風や地震、津波に際限なく痛めつけられるという宿命は、どんな人間を作ったのか。』

編者を一人で務める日本文学全集を刊行中の氏は、日本人の精神に思いを馳せてい

ます。

『「古事記」から「平家物語」、「曽根崎心中」、そして現代文学と読んでいくなかで、日本人

とは、無常の感覚を心に抱え、色恋を好み、武勲を誇るよりも敗者をいたわる人たちで

あると考えるようになった。近代以降の日本人は大きく変わったが、今なお私たちの精神

の基底にはそうした心性が息づいている。』



『同時に、日本人は天災と復興を繰り返す長い歴史の中で「災害ずれ」してしまった人間

だとも思う。「仕方がない」と割り切り、必死に思い詰めるより花見をしてゆったり暮らしたい。

そう考えてきたのだろう。被災地の復興はなかなか進まないのに、五輪で遊ぼうという今の

ムードにも、そんな心が表れてはいまいか。』

更に氏は、利他的な動きや不便さの受容など、震災直後に抱いた期待が後退して行く社会

にもどかしさを覚えています。この点、先の鷲田氏よりもかなり悲観的です。

『これを機に世の中が変わるのではないかという思いがあったが、結局、すべて元に戻って

しまったように私には見える。社会をより良くしたいというあの雰囲気は、災害時だけの

ユートピア幻想に過ぎなかったのか。・・・お金や経済以外の原理も少しは力を持つかと

期待したが、何かが変わったという感じはしない。・・・今の現状のまま5年のラインを越えて

しまっていいのかと思う。』



③漫画家 萩尾望都氏

そうです、あのSF漫画の名作『11人いる!』の作者です。


『今は、科学には限界があるという事実を受け入れている。』

SF的な漫画で一世を風靡した氏は、SFとは未来への警告を発する表現だと考えて

来たといい、震災後も幾つもの警告の作品を描いて来ました。

『原発は社会に賛否両論の議論を呼び起こしている。ただ、事故は誰かの悪意が

起こしたものではない。この世に「絶対的な悪」などない。・・・今は対峙する双方に

理があり、どうコミュニケーションをとるかという話になる。ただ、コミュニケーション

とは決して穏やかなものではなく、互いが傷つき、痛みを伴うもの。それでも抑圧や

打倒ではなく、対話を選べるか、という問題だ。・・・反対を声高に叫ぶだけではだめ

だ。現代人は全員、複雑なシステムの中にいる。もし本当に変えたいのなら、その

複雑さの中で現実的に考えながら、意見を異にする人たちを説得する戦略が必要

だろう。』

素晴らしい見識ですね!

『震災後、日本人は毎日岐路に立たされている。今の問題は上の世代が良かれと

思ってやってきた結果だ。未来を作るのは若者。「敵」に見立てた他者をたたく安易さ

に流されず、状況の本質を深く問うて欲しい。』



④文芸評論家 加藤典洋氏

資源や環境が有限な世界で、無限の欲望と力を持った人間が生存する条件とは何か。

この問いに対し氏はこう答えています。

『人間は何かを「することができる」だけでなく、「することも、しないこともできる」存在だ。

利益を果てしなく追及することを「しない」選択もできる。・・・(フェイスブックやリナックス

のように)見返りを期待しない「贈与的動機」が、結果的には巨大な産業を生んだ。私は

一緒に読書会をやっている学生たちとの対話から、こうした視点に気づかされた。新しい

時代の感受性を持った人は確かに現れている。』

氏は新しい感性を持った若者に期待をしています。


⑤写真家 畠山直哉氏

『私は津波で実家を流され、母を亡くし、・・・当事者だ。そんな人間が撮った写真が

美学的に論じられることがとても不自然に思える。今、芸術や文化について考える

のは本当に難しい。震災直後から、希望や未来を軽々しく語る言葉と、結論ありき

の表現があふれたが、果たしてああいうものに何かリアリティがあったのだろうか。

一方、若い美術家に広がる社会参加型アートの動きは、自らの正しさを疑わない

ところが鼻白む。ではどうしたらいいのだろう。・・・自分にとって自然なことをすると

いう、ナイーブなところから出発するしかないのだろう。』

自らが災害の当事者の氏の言葉は、重みがあって強烈です。と同時に、問いを発

するだけに留まらず、その答えを探そうとする強靭な意志と責任感に心打たれます。

『死すべき運命にある人間は、いつか必ず超越や神といった問題と出会う。そのこと

を若い世代にこそ真剣に考えて欲しい。・・・だが私は問うだけでいいのかと考える

ようになった。俯瞰的な視点から世界を眺め、自ら発した問いに対して、人々を安心

させる答えを探し始める時だと思う。』

5年目の3.11を前にして、改めて、被災された方々、未だに不自由を強いられている

方々に、心よりお見舞いを申し上げます。
2016.03.09

春の来訪者

3月に入りポカポカ陽気が続き、春を感じられる様になりました。

弊社にもそろそろ”春”を告げる来訪者が現れます、今年も2月末頃から飛来して来ました、そう”渡り鳥”達が数十羽やってくるのです。これから11月末ぐらいまで弊社の国道沿いの花壇内に植えてある立木を棲み家にしているのです。

実はこの鳥達に、弊社は困っているのです、鳥たちは、早朝から餌を求めて外に出かけていきます、帰りは日が暮れる頃です、不気味なくらい立木に止まっています、その為鳥のフン害で歩道が真っ白になってしまいます。

毎朝営業開始時間に、敷地内の清掃をしているのですが、フンはほうきで取りきれない為週に数回デッキブラシで水洗いをしています。



写真に写っているのは、富田取締役で社員の先頭に立って清掃活動をしています。

国道沿いの花壇内に在る2本の立木が鳥の棲み家です、まだ新芽も出ていないのに鳥たちでいっぱいになっています。



弊社の、住まいの住み心地は大変良いと鳥たちも言っている様です・・・なんてネ

リフォーム部の中根がお伝えしました。
2016.03.03

新箱根八里記念碑(峠の地蔵)

法人チームの横山です。

箱根の現場へ行く途中で久しぶりに寄ってみました。

皆さんんは箱根エコパーキングの奥に峠の地蔵があるのをご存じですか?

これが峠の地蔵です。



社団法人三島青年会議所(当時)が2003年3月27日に設置しました。


私はこの年が三島青年会議所の卒業年だったのでよく覚えています。

著名な8人の女性に揮毛いただき、この新石碑が誕生しました。

橋本聖子さんの地蔵


杉本苑子さんの地蔵



宮城まり子さんの地蔵



橋田寿賀子さんの地蔵



黒柳徹子さんの地蔵



桜井よしこさんの地蔵



穐吉敏子さんの地蔵



向井千秋さんの地蔵



デザイン・監修は島村芳三さんです。

今月で設置から13年が経とうとしています。

皆さんにぜひ寄っていただきたい場所です。
2016.03.03

コンセプト賃貸住宅完成見学会

法人チームの横山です。

新しいアイデアを形にしたこの賃貸住宅は新聞等にも取り上げられ、このブログにも何回か投稿しました。

民間100%出資の地域活性を含んだ取り組みで、伊豆を元気にするビジネス連携、交流がここから始まります。

昨年8月に着工して、いよいよ皆様にお披露目できることとなりました。

3月12日(土)、13日(日)に見学会を開催いたします!

12日は開催時間を19時まで延長しライトアップされた姿もご覧いただきたいと思っています。

ぜひこの機会に会場へ足をお運びください。

2016.03.02

いちご大福と雛祭り

あれもこれも担当の千葉です。

ここ三島では、穏やかな日がもうしばらく続く天気予報です。明日はもう桃の節句。『弥生・

三月』といい『桃・雛祭り』といい、響きからしてもいよいよ春の到来ですね。

苺はハウス栽培が主流となり、クリスマスの時期など冬にも大活躍していますが、露地もの

の最盛期は3~4月だそうで、そのためかこのところ特集や広告で『いちご大福』を見掛ける

ことが多く、我が家ではにわかに『いちご大福』づきました。



日経新聞の週末特集記事に、全国のお取り寄せ可能な『いちご大福』の人気ランキング

が掲載されていました。堂々の第1位は本店が博多にある『鈴懸』さんの苺大福で、お餅

ではなく求肥にこし餡、イチゴは『あまおう』というスペックだそうです。この『いちご大福』は、

第2位にランクインした東京は新宿本店の『大角玉屋』さんが1985年にいち早く売り出し

たもので、当時は生の果物を使う和菓子は珍しく「気持ち悪い」と食わず嫌いの人もいた、

と書かれています。



この記事の直後、息子が週末に用事があって帰省したぴったしのタイミングの広告に、

まるで見事に釣り上げられるかのように、我が家に『いちご三姉妹』がやって来ました。



3Lサイズの苺に負けない大粒の丹波産大納言小豆のつぶ餡に羽二重餅の豪華な

『長女』。「極上の」とあるように、庶民的な『大福餅』とはかけ離れ、上等なケーキと

同じくらいのお値段!



「ものしずかで上品な」、白こし餡の『次女』。



「ちょっぴり甘えん坊」、地元産の『紅ほっぺ』に練乳クリーム入りの『三女』。

そうとなれば、当社のお得意様でもある『兎月園』さんの『いちご大福』も、ということで

週末に伺いました。



こちらはこし餡。これでこし餡、つぶ餡、白餡、練乳入りと制覇したことになりました。

これからは、『雛祭り』と聞くと、『いちご大福』を連想してパブロフの犬宜しく、喉がごくりと

鳴りそうな気がします。

『兎月園』さんでは、季節感豊かで大好きな『ミニ上生菓子』も戴き、春らしさが一気に加速。





私は気付かずに食べてしまったのですが、妻に言われて感心しました。お雛様の求肥に

桜の花びらの文様が型押しされていました!(写真では見えるでしょうか?)何と素敵な

意匠でしょう!

女将さんからおまけに本格的な『菱餅』まで戴いちゃいました。いつもありがとうございます!

美味しく頂戴しました。

2016.02.26

シリーズ・現場巡回の楽しみ~枝垂れ梅

あれもこれも担当の千葉です。







今朝の三島は冷え込みました。椿の葉に霜が降り、愛車もこの通り。










でもお昼に向かって寒さも和らいでいますし、今日の地鎮祭の現場近くの木蓮の開花

を見て、春がもうすぐそこまで来ているのだなぁと実感しました。










さて、月に一度は、全部の現場を巡回したいと思っています。私は技術者ではないので、

現場を見る時には、自分がお客様になったつもりで、住まい、使う立場から眺めて見る

ようにしています。私としては、現場での困りごとなどないか聞き、慰問・激励のつもりも

あるのですが、質問や指示が技術的な側面からではなく、想定外の方向から飛んでくる

ために、煙たがられているのかも知れません。



先日は、住宅リフォームの現場で、竣工間際にもかかわらず、新たな指示を出して監督を

煩わせました。愛着のある古いお住まいを2千万円以上かけてリフォームする工事で、この

監督も、天井を取り払ってみたら梁が立派だったため、居間の天井を一部取り払って勾配

天井とすることで、素敵な古材の梁を意匠的に見せるように設計を変更し、施主様に喜んで

戴けるよう自ら工夫をしていました。そこに輪を掛けて、折角沢山の費用を掛けるのだから

すっかり新しくなったねとご近所様からも褒めて貰えるように、予定にない外観の変更を指示

したのですが、竣工間際にもかかわらず、快く引き受けてくれました。きっとこの監督の苦労

は、お引渡しの時のお客様の喜ばれる笑顔で報われることでしょう。






現場巡回の楽しみは、他にも沢山。先日は現場近くに咲く枝垂れ梅が目の保養になりました。



また、出掛けにコンビニでコーヒーと飴を道中用に仕入れるのですが、季節感があったり、

珍しいものに出逢える楽しみもあります。先日の収穫はこれ。(と、これ、と、これ)






いつもの『特濃』ではなく、チョコを入れた『特恋』ですって!







こちらはバターと焦がしバター味。







最近はイチゴ味が多い気がします。



最後に、温泉の浴槽。古代檜に何層も重ね塗りした漆の浴槽。仕上がりが楽しみです。



2016.02.19

我が家のお気に入り~銘菓シリーズ・金沢編

あれもこれも担当の千葉です。



妻が毎年同級生たちと出掛ける小旅行、昨年は春に北陸新幹線が開通した金沢

だったのですが、身内の不幸があったりして断念。そこで妻が友人たちに頼んだ

お土産のお話です。



金沢は小京都というよりも、加賀百万石のおひざ元でお江戸や京都に勝るとも劣ら

ない洗練した文化が栄え、全国に鳴り響く銘菓が沢山あります。『長生殿』で有名な

森八さん(私は『千歳』が大好きなのですが)。諸江屋さんの可愛くて美味しい落雁。

『柴舟』の小出さんなどなど。でも今回妻が頼んだものは、昨年2月に日経新聞の

週末特集版・日経プラスで特集されたものでした。







麩室屋さんの『宝の麩』。指で小さく穴を開け、お椀に入れてお湯を注ぐと中から

可愛いお麩の花々などの具が湧き出でます。







これが日経プラスのお総菜部門お土産第1位。






そして日経プラスのお菓子部門お土産第1位がこれ。







まめや萬久(ばんきゅう)さんの『みたらし豆』。お豆のお味も格別ですが、紙の器は

九谷焼の絵付けの伝統を汲んだ手書きという贅沢さです。






おまけ・・・リニューアルなったイトーヨーカ堂の西武さんのコーナーで発見!聞いては

いたのですがまだ食したことのなかった金沢のお菓子。







高木屋さんの『紙風船』。こちらは少しモダンな感じ。丸~い最中生地の中には

甘さを抑えた絶妙なゼリー。







ゼリーの味は葡萄、ワイン、檸檬。美味しいだけでなくとても可愛いでしょう!



今年は結婚30周年。記念に北陸新幹線で古都金沢を訪れたいねと話しています。







PS:こんな原稿を書いている最中に、金沢の中田屋さんのきんつばを戴きました!





2016.02.13

新幹線の中での些末な考察~原材料名:コーヒーのみ

あれもこれも担当の千葉です。





東海道新幹線こだま号の車内で、仮眠から覚めてふと視線を上げると、、、






そこには見事に剃り上げたお坊様のみ頭が。



いやいや、どこか色も不自然だし、背もたれに比べて小さいし、、、







背もたれについている取っ手でした。







缶コーヒーは良く飲むのですが、飲む量が少なくないことから、糖類のないブラック・

コーヒーを飲むようにしています。ブラック・コーヒーなら原材料はコーヒーだけなのかと

思いきや、香料だの、中には『シリコン』と表示されていてびっくりしたことがあります。

このシリコン、どうやら、界面活性剤として使われ、防腐剤と同じような効果が期待でき

るようです。メーカーのホーム・ページには、規定以下の微量であれば人体への害は

殆どないと書かれたものもありました。

それでも消費者からの印象が悪いのか、最近では『シリコン』の表示の代わりに『乳化剤』

なる表示がされています。



先日東京駅のキオスクで買ったブラック・コーヒーの原材料名を見たら、コーヒーのみ。

中には安易な香料や乳化剤使用に頼らずに、コーヒーのみで勝負しようと努力している

メーカーもあるのだな、と感心しました。(同じメーカーのブラック・コーヒーでも、銘柄に

よってコーヒーのみのものやそうでないものが混在しているケースもあります。)きっと

コストや工夫も余計に掛るのでしょうし、そんなことを気にする消費者も多くはないのかも

知れませんが、そうした企業としての矜持というか姿勢はとても大切だなと感じました。



当社も、『原材料名:コーヒー のみ』を心掛けたいと思っています。



2016.02.09

シリーズ・新聞記事より~乙女なおじさん?

あれもこれも担当の千葉です。

新聞というのはお堅いイメージが付きまといます。そりゃ週刊誌やテレビの民放に比べ

れば遙かにお堅いのでしょうが、文化欄などを中心に、結構楽しい記事も見受けられ

ます。最近の新聞からそんな記事を幾つか抜き出してみました。

まずは1月20日の日経新聞より、芥川賞・直木賞発表の記事。滝口悠生氏の『死んで

いない者』と本谷有希子氏の『異類婚姻譚』が芥川賞に、青山文平氏の『つまをめとらば』

が直木賞に選ばれました。本谷氏の小説は、2006年から09年にかけて数冊読みました。

歳はまだ36歳ということですが、新人というよりはもうかなりのベテランですね。



そんな記事のほんの2日前に、同じ日経新聞に面白い記事がありました。



文学賞受賞が作者に及ぼす健康効果について。社会的地位の健康効果に関する研究

の中で、芥川賞・直木賞の受賞が余命に与える影響を分析したとの記事です。ノーベル

化学賞・物理賞の余命効果はプラス1.6年。アカデミー脚本賞はマイナス3.6年。芥川

賞はプラス3.3年で直木賞は逆にマイナス3.3年。若手純文学の登竜門たる芥川賞の

ように、未だ若く経済的地位が確立されていない時の受賞は余命にプラスの効果があり、

売れっ子の大衆文学作家が多い直木賞受賞者などは、心理的ストレスが増えるからとの

分析がされているようですが、いささか強引な分析に聞こえます。



日経新聞の朝刊最終面は、 なかなか面白い紙面です。ひと月でひとり、各界の著名人

の自伝連載の『私の履歴書』は有名ですし、新聞小説もこの最終面にあります。しかし、

白眉は文化欄の寄稿記事ではないかと思います。このひと月でもかなり楽しい記事が

掲載されました。

去年『流』で直木賞を受賞した東山彰良氏の『役立たずたちの道』。お気に入りのオー

ストラリア出身のロック・ミュージシャンのリック・スプリングフィールド(懐かしい!)の

アルバム・タイトルの『TAO』が実はタオリズム、つまり道教・老荘思想から来ているとの

導入に続いて、老荘思想の例え話やオスカー・ワイルドの言を引いて、『無用の用』に

ついて論じています。芸術などのように役に立たないからこそ純粋に他人の心を打つ

ものもあるのだと。



その一週間後くらいには、3年ほど前に『爪と目』で芥川賞を受賞した藤野可織氏の

寄稿もありました。ネットの検索の便利さから始まり、ネットを通して同じことを感じ・

考えている人が自分の他にもいることが判り、ふと人は多くの他人と繋がっているような

錯覚を起こしたが、やはり自分の脳は自分一人だけしかアクセスできず、そればかりか、

あらゆる脳が孤立しているという事実に立ち返るもの。



更にその一週間後には、2年前に『昭和の犬』で直木賞を受賞した姫野カオルコ氏の

『舞姫のユーウツ』が掲載されました。『いい感じで日経新聞片手に御食事中なら、

お願いします。どうか、この欄を読むのはおやめ下さい。』と始まるこの寄稿の要約は

さし控えるとして、公共の場での『はしたなさ』への異議申立は、この作家の身上である

ユーモアに実に富んでいました。

この欄の寄稿者は文学者ばかりではありません。私の趣味で文学者のものの紹介が

多いだけで、色々な文化人の寄稿があります。主婦だった方の趣味が高じて絵双六の

研究者になった方のものも、今まで知らなかった世界を紹介してくれました。



デビッド・ボウイやグレン・フライ、モーリス・ホワイトと、 先月から今月に掛けて、私の

青春時代の憧れのスター・ミュージシャン達の逝去の報が続きました。なんと、お堅い

はずの日経新聞(最終面)に、『あの』渋谷陽一氏の追悼記が掲載されました。伝説的

なロック評論家で、中学生の頃は憧れて私も音楽評論家になりたいと夢見たことのある

方です。評判が良くなかったために買わないでいたデビッド・ボウイの最新作(遺作)を、

この追悼記を読んで取り寄せてみました。



うーむ、メロディ・ラインが綺麗でポップスセンス旺盛なボウイとは随分とかけ離れた

印象のアルバムでした。



最後は、最終面ではありませんが、面白い記事をご紹介しましょう。



『ヨガやバレエ、フラダンスなどに挑戦する中年男性(乙女なおじさん)が増えている』

のだそうです。『バレエシューズを履き、白いステテコ姿もいる。』『腰みの姿で音楽に

合わせ、腰を柔らかく振りながらステップを刻んでいた。』

先の姫野カオルコ氏の記事ではありませんが、どうぞ、公衆の面前ではご遠慮を

戴ければ、と願うばかりです。