2019.09.13
シリーズ・徒然読書録~光藤アサミ著『幸せ招き猫』
あれもこれも担当の千葉です。

 

 

読書は好きで、常時本を持ち歩く癖が付いてしまいましたが、読み方は極めて

大雑把、何かしら記憶のどこか、心の片隅にでも蓄積されていれば良いという

思いで雑然と読み流しています。暫くするとその内容どころか読んだことさえ

忘れてしまうことも。その意味で、読者の皆様には退屈でご迷惑かとも恐縮し

つつ、ブログに読書録なるものを記してみるのは自分にとって有益かも知れない

と思い、始めてみました。皆様のご寛恕を請うところです。

 

徒然なるままに読み散らす本の中から今回取り上げるのは、光藤アサミ著『猫好

きの三十一文字日記「幸せ招き猫」』(文芸社刊)です。



お子さん達が小学校に上がる前に飼うことになった迷い猫が、十数年の後に猫

エイズで安楽死するまでの日々を三十一文字(みそひともじ)で綴った歌集で

す。

 

『日記』と言えば、土佐日記や、蜻蛉日記・和泉式部日記などの王朝女流日記

文学を想起しますが、これらは【散文+短歌】で綴ったものですし、紀行文で

もあり句集でもある奥の細道も【散文+俳句】の形式となっています。女流俳

人の黛まどかさんの『聖夜の朝』も切ない恋の経験を、【散文+俳句】で綴っ

たものでした。

今回の『幸せ招き猫』は、散文が無く、400首を超える三十一文字のみが並

んでいますが、生まれて間もない子猫の頃に飼い始めた迷い猫が、家族の一員

となり、十数年の後に天に召されるまでの日々を、それこそ『日記』のように

活き活きと描写しています。



我が家でも片方の掌に乗ってしまうほど小さい頃に迷い込んで来た子猫を

2匹飼い始めて十数年ですので、身につまされるやら、そうそう!と膝打ち

するやら、楽しく読めました。ここからは、400首余りの中から幾つか

を拾い出してみましょう。

 

・後ろ髪 引かれる思いで 売り猫の 瞳見ぬふり 足早に退く

(飼い始めた迷い猫のために訪れたペット用品売り場で、ケージの中から

訴えるような目を向けて来る売り猫の視線。)

 

・「ムニャムニャ」と 猫が寝言を 言う時は 人と同じで 夢見ているか

(猫も人と同じように、鼾もかけば寝言も言います。歯ぎしりは?)

 

・体重計 急な増加に 仰天す 気付くと猫の 前足が乗り

(お茶目なイタズラをしようと思ったのではないのでしょうが、、、。)

 

・テーブルに 新聞広げ 読み出すと 読ませないぞと 邪魔する子猫

(飼い猫のお得意技ですね。)

 

・旅先で 家が心配 電話する 夫が出るも 「猫どうしてる?」

 

・着替えたり 化粧で外出 分かるのか 猫はすりすり さみしい素振り

(うちの猫たちは、病院に連れて行こうとすると、何故か気配で判るのか

どこかへ隠れてしまいます。)

 

・その昔 後追いをする 子の声を 背中で聞いた 切なさ浮かび

(お留守番は嫌ですものね、猫も子どもも。)

 

・足踏みは 乳の出良くする 仕草とや 子猫の頃の 幸せの癖

(『幸せの癖』という言い回しにノックアウトされてしまいました。)

 

・会食時 椅子が一つ 足りないと 愛猫我の 背中を叩く

(我が家では不在がちの私の椅子が猫らの特等席のようです。)

 

・夏の日の 涼しい風の 通り道 猫の居場所と 猫に教わる

(本当に冬は暖かい所、夏は涼しい所をよく知ってるんですよね。)

 

・昨日まで そこに居た猫 今日は亡し されど鳴く声 幻聴消えず

 

 

猫好きでなくとも、猫との暮らしの悲喜こもごもが胸を撃ちます。著者は私の

高校の先輩でもあります。是非お手に取ってご覧になってみて下さい。