2019.02.08
二つのムンク展
あれもこれも担当の千葉です。

先月、東京都美術館に『ムンク展~共鳴する魂の叫び』を見に行って来ました。
(会期を既に過ぎてしまった時点での投稿ではお叱りを受けてしまいますね、
申し訳ありません。)



ムンク(1863年~1944年、ノルウェー)といえばこの『叫び』

(4種類のバージョンがあるそうです)が代名詞のようになっています

が、印象派・ポスト印象派の影響を強く受けながら独自のスタイルを求

め続けたために、幅広い画風が見られます。











ノルウェーと言う北の果てのお国柄、そして世紀末や二度の世界大戦を経験

する欧州の不安定な社会情勢を受けて、ムンクの絵のテーマや特徴として

『不安』がよく指摘されますが、私にはもう一つ、徹底した『女性礼賛』の

画家のイメージがあります。

 

 

今回の展示にはあまりその手の作品がありませんでしたが、今から41年前に

行ったムンクの一大版画展(東京、1977年12月~1978年1月、版画

218点)では、自ら新しい命を産み出せる輝かしき女性と、ただ死にゆく定

めの象徴として骸骨で現わされる男性との対比というモチーフの作品が幾つも

あり、まだ夢多く自信満々の青年であった私は、それこそ金鎚で頭を殴られた

ような衝撃を受けたのを、未だに覚えています。もう一度見たくて、東京での

展示の数カ月後に戻って来た、鎌倉の県立美術館まで追い掛けて行きました。



今回初めてお目に掛かった一番のお気に入りは、ベッドの上で黒髪を乱し

うな垂れる、『すすり泣く裸婦』でした。



ところで、40年越しに再び出会えて感動を新たにした二つの木版画、

『接吻』と『浜辺にいる二人の女』は、あの頃夢中になって読んだ福永

武彦氏の小説(確か、氏の代表作『死の島』)の文庫本の表紙でもあっ

たような記憶があるのですが、今となっては確かではありません。





40年前の自分を思い出させてくれる展覧会でした。