2017.08.10
シリーズ・徒然読書録~ジャケ買い、若しくは藤田宜永著『奈緒と私の楽園』
あれもこれも担当の千葉です。

 

 

読書は好きで、常時本を持ち歩く癖が付いてしまいましたが、読み方は極めて

大雑把、何かしら記憶のどこか心の片隅に蓄積されていれば良いという思いで、

雑然と読み流してしまいます。その意味で、読者の皆様には退屈でご迷惑かと

も恐縮しつつ、ブログに読書録なるものを記してみるのは自分にとって有益か

も知れないと思い、始めてみました。皆様のご寛恕を請うところです。

 

 

徒然なるままに読み散らす本の中から今回取り上げるのは、藤田宜永著『奈緒と

私の楽園』(文芸春秋刊)。

 



先日の日経新聞に面白い記事がありました。直木賞作家の萩原浩氏の

『ジャケ買い』に関する寄稿で、萩原氏がジョン・アーヴィングの

『ガープの世界』をジャケ買いしてこの素晴らしい作家を知ることに

なったという記事です(J・アーヴィングは私も好きで、『ホテル・

ニューハンプシャー』や『サイダー・ハウス・ルール』がお気に入り

でした)。

 

レコード、それもLPでは私もジャケ買いしたものは何枚もあり

ました。では小説はというと、帯や書店のポップに釣られて手に

することはよくありますが、いわゆるジャケ買いはあまりありま

せん。その数少ないジャケ買いの一つが、先日図書館で見掛けた

この本です。



まさに表紙の絵を見てあれっ?と思い手に取った本です。皆様ご存知の

アンリ・マティスの代表作である『ダンス』(MOMAではなくエルミ

タージュに収蔵されている方)、はて、他にもこれを表紙にした小説を

確か読んだはずだ、と思いながら今もって思い出せていません。

 

さて、藤田宜永氏の本著ですが、人生や女性関係を達観している主人公が

想定外の言動をする若い娘に惹かれ、大人という仮面の下に隠してあった

自分の、母性への憧れや幼児性が露わになって行くという内容。直木賞作

家とは言うものの、臆せず一刀両断に切り捨ててしまって良いものならば、

『無邪気そうな女を官能の蜜壺に誘い込んで、新しい世界を見せてやろう

なんて気持ちは毛頭ない。ふわりとした奈緒に惹かれているだけである。』

という程度のスノビッシュで軽薄でいて、世俗の薀蓄に富んだ如何にも藤田

流のお洒落で軽いポルノ小説といった感想を持ちました。同じような男女の

心の機微をテーマにしていても、直木賞受賞作『愛の領分』の頃はもう少し

真摯さがあったように思えるのですが、、、。

 

 

数少ない小説のジャケ買いのもう一つは、ちょうど一年ほど以前にこの読書録

にも取り上げた群像新人賞作家の朝比奈あすか著『少女は花の肌をむく』です。

http://www.szki.co.jp/blog/archives/6552



これも『肩すかし』を喰った感じでしたので、私にはどうもジャケ買いのセンス

がない、ということのようです。