2017.05.19
シリーズ・徒然読書録~『インドネシアの基礎知識』
あれもこれも担当の千葉です。
読書は好きで、常時本を持ち歩く癖が付いてしまいましたが、読み方は極めて
大雑把、何かしら記憶のどこか、心の片隅に蓄積されていれば良いという思いで
雑然と読み流してしまいます。その意味で、読者の皆様には退屈でご迷惑かと
も恐縮しつつ、ブログに読書録なるものを記してみるのは自分にとって有益か
も知れないと思い、始めてみました。皆様のご寛恕を請うところです。
徒然なるままに読み散らす本の中から今回取り上げるのは、加納敬良著『アジア
の基礎知識3、インドネシアの基礎知識』(めこん刊)。先月ジャカルタでテロ
事件がったり、中学・高校の親友がジャカルタに駐在していたりと気になって
いたので図書館で借り出してみました。
インドネシアは面積(日本の5倍以上)、人口(2.5億)ともに世界最大の
島国です(グリーンランド・デンマークを除く)。また、世界最大のイスラ
ム教人口を抱える国でもあります。
1年を通じて月平均気温は26~29℃で、最高気温は35℃を超えず、最低
気温は25℃に届かないという、赤道直下でありながら猛暑日や熱帯夜がなく、
熱さは割合穏やかだというのが驚きです。インドネシアもまた4つのプレートが
せめぎ合うエリアで、日本と並ぶ火山大国・地震大国です。
4世紀以降、ヒンドゥー教、大乗仏教、イスラム教の国家が興亡し、16世紀
以降の西欧(ポルトガル・スペイン・オランダ・イギリス)や第2次大戦時の
日本などによる支配を経て、1945年に独立を果たしました。
インドネシア共和国は、単一のインドネシア民族の下に300ほどの種族が
あり、単一のインドネシア語(公用語・マレー語が母体)以外にもそれぞれ
の部族語がある。そのため、公式の場ではインドネシア語を、日常ではそれ
ぞれの部族語を話すなど、大概の国民がバイリンガルだそうです。ただ、種族
を超えて結婚した場合、日常でもインドネシア語を用いるため、生まれた子供
はモノリンガルになる、ということも驚きです。
そもそも歴史的に国土が一定せず、一つの国・一つの民族としての意識を
持ちにくい中で、19世紀初めにマラッカ海峡を挟んでマレー半島側を英国
領、スマトラ島以東の島嶼をオランダ領と決めた条約以降のオランダ東イ
ンド会社の統治によって、単一国家の体裁と意識が育まれたというのは、
とてもアイロニカルな指摘です。独立運動のさなかの1928年『青年の
誓い』で、一つの国土、一つの民族、一つの言語としてのインドネシアを
決議したのが現在のインドネシアの骨格を形作っています。
一部の部族を除いては、『父系・母系のはっきりした血縁組織を持たない、
双系的社会』とありますが、要するに一般的には父親や母親の苗字を引き継
がない(家族としての苗字はない)ということだそうです。山田太郎さんと
佐藤花子さんの子供が田中一郎さんであったりする社会だということですね。
イスラム教徒が人口の87%と言っても、イスラム教を国教とするイスラム
国家ではありません。また、イスラム法が国の法律としての地位を持つ訳でも
なく、宗教裁判所もありません。5つの『唯一神』宗教が公認宗教とされ、
国民はそのうちどれを信仰するか登録する義務があるとのこと。その5つとは、
イスラム教、キリスト教(カトリックとプロテスタント)、ヒンドゥー教、
仏教、儒教。ヒンドゥーや仏教が唯一神かどうか、はたまた儒教は宗教なのか
驚きはありますが、とても宗教には寛容な感じがします。元来が豊かな土地柄
なのだろうと拝察しました。