2013.08.29
講演聴講抄録~消費構造の変化
あれもこれも担当の千葉です。

 

お取引金融機関さんや各種所属経済団体の主催する講演やセミナーに出席する機会

がままあります。今日はちょっと前になってしまいましたが、7月に聴講した2件につい

て、印象深かった部分をご紹介します。あくまでも文責は私に在る点をご諒解下さい。

 

一つ目は、お取引金融機関さんのセミナーにて。

『変化こそチャンス!!』~消費動向・人口動態・中国問題をどう見るか~

と題した、フロンティア・マネジメント(株)代表取締役の松岡真宏氏の講演でした。

松岡氏は内外の証券会社勤務を経て、産業再生機構でカネボウとダイエーの2大案件

の実務責任者として手腕を振るわれた方でもあります。



最も印象深かったのは、バブル後20年間の家計消費についての考察です。

バブル後は失われた20年とか、デフレ・スパイラルと呼ばれて、あたかも消費が減退

したかのような誤解があるが、バブル頂点の1989年を100とした時に、2008年の家

計消費全体は99.1とほぼ消費が減っていないことを統計は表している。実は、消費

が減ったのではなく、消費の内容が大きく変わったのだ、ということです。

 



(ピンボケですが、俳優にしたいくらいのハンサム・ガイです!)

 

家計消費の内訳を、同様に1889年を100とした数字で表すと、最も増えているのは

保険医療費で153.1。つまり53%増。これはすんなり来ますね。次に増えているの

が交通・通信費で136.9。これまで家には1台の固定電話だけだったものが、家族

が銘々に携帯を持ち、家庭にパソコンも持つようになったことによる、通信費増による

ものです。そして3番目は住居・光熱費で128.4。これは家庭内に家電製品が増え、

電気料が増えたことによります。お茶の間に1台のテレビが各部屋に1台、エアコンの

ない部屋も少なくなったし、食洗器や空気清浄機など家電製品が相当増えました。

 

こうして増えた医療費、通信費、光熱費の出費を補うために減らしたのが衣料費で、

58.2。なんと42%も減っています。その次が家具・日用品で80.4。約20%の減

です。モノへの消費が激減しているから、イメージとして消費全体が落ち込んだとい

う印象になってしまいがちだった訳です。衣服という目に見えるモノから医療・通信・

電気代という目に見えないものに、消費の対象が大きくシフトしたということですね。

 



松岡氏は、今後、所得が増えて行かなければ、増え続ける医療・通信・光熱費の分

の埋め合わせは恐らく、まだ91.6の水準の食料に向かうのではないかと予測して

います。アベノミクスが持て囃されて以来、高級品の売り上げが増え、デパートの売

上は増えているのに、値引き合戦の激しいスーパーマーケットの売り上げがまだ減

り続けているとの報道からすると、松岡氏の予測は当たっているのではないかと思

います。

 

 

もう1つの講演はこの3月まで私が代表幹事を仰せつかっていた、静岡経済同友会

東部協議会でお呼びした、日本銀行静岡支店長の服部守親氏の講演。経済同友

会では、毎年日銀の支店長からお話を伺い、定点観測にしています。



インフレターゲットを2%とする現在の方針の下では、長期金利は理論的に言うと、

潜在成長率(1.25%)+インフレ期待率(2.0%)+中央銀行や政府の信認

(0.0%)=3.2%となる。これまでのところ大きく中央銀行の信認が崩れていな

いが、ここにリスクありと市場が看做せばこれよりも長期金利は上がってしまう。

現在3.2%より遥かに低い0.7%~0.8%台程度であるのは、金融緩和効果に

よると思われる。即ち、日本のマネタリーベースは異次元緩和前の平成24年12月

時点でも138兆円と、世界でも極めて稀な高水準にあり、平成25年6月末時点では

既に162兆円。黒田日銀総裁の方針では平成26年末にはこれを270兆円にまで

引き上げると言っていることによるものと思われる。

 

長期金利の安定のためにも、日銀の資産内容が劣化しないこと、政府の政策へ

の信頼感にキズが付くようなことがないことを切に願うばかりです。



現在の世界の金融政策は混沌としている、とも言っておられます。欧州ではデフ

レ懸念が強まり、金融緩和の必要性が高く、日本は金融緩和を加速、中国では

成長力が急速に鈍化する中でバブル予防の引き締めとの矛盾するニーズ、米

国は金融緩和の出口戦略に苦心、新興国は米国の出口戦略のあおりで資金が

流出するのを必死に防ごうとしている、、、。

 

と、金融のスペシャリストとして、現状をわかりやすく紐解いて下さったのがとて

も印象的でした。