2016.10.24
芸術の秋~『横山大観』展と『徳川の平和』展
あれもこれも担当の千葉です。
『霜降』と書くと、二十四節気の初めて霜が降りる頃の『そうこう』ではなく、真っ先に
よだれが垂れてしまいそうなお肉の『しもふり』と読んでしまう私は、断トツの『食欲の
秋』派ですね。日中はまだ汗をかく陽気となっても、さすがに朝晩はめっきり冷えて
来ました。霜が降りるのもそう遠くなさそうです。
『食欲の秋』派の私が、柄にもなくチャレンジしてみた『芸術の秋』を二題ご紹介します。
まずは、我らが三島が誇る佐野美術館で開催中の『横山大観展~大気を描く』
(10月1日~11月6日) 。開催前に静岡新聞で各種の特集が組まれました。
横山大観(明治元年~昭和33年)と言えば、岡倉天心の弟子として近代美術の先達とな
った近代日本画壇の金字塔であり、第一回の文化勲章の受勲者でもあります。近現代の
日本画の全集でも第1巻を飾る巨星です。今回の企画展は、佐野美術館の創立50周年
の記念事業として企画されたもので、横山大観の作品がこれだけ多く集められた展示は
なかなかあるものではなく、それが三島で見られることに、くすぐられるような誇らしさ、嬉
しさを感じてしまいます。
開催前日のレセプションで拝観させて戴いた作品群の中からいくつかを羅列して見ます。
(1893年、村童観猿翁、芸大卒業制作)
(山路)
(1917年、秋色、部分)
(1919年、洛中洛外雨十題 八幡緑雨、部分)
(1929年、白梅)
(1909年、瀑布四題)
(1922年、夜)
琳派、狩野派に学びながら、西洋画の手法も取り入れ、日本画の新たな境地を切り
開いて行く中で、輪郭の線を極力描かない没線描法は、非難や揶揄の意味も込めて
当時は『朦朧体(もうろうたい)』と呼ばれたそうです。この辺りの作品はその
面目躍如といった感じですね。
(1927年、雲揺ぐ)
(1903年、富士山)
また大観はモチーフとして富士山を良く描いたことでも知られていて、今回の展覧会
では、富士山の特集もあり、見応えがありました。
(1917~1918年、群青富士、部分、静岡県立美術館所蔵です!)
(1915年、不盡之高嶺(ふじのたかね))
(1944年、耀八紘)
(1952年、或る日の太平洋)
もう一題は、静岡県立美術館で開催中の『徳川の平和』展。
家康没後400年を記念して、パックス・トクガワーナがもたらした高度に芸術性豊かな
江戸絵画を通覧できるように企画されたものです。
四月の県美の企画『東西の絶景』展には、今回も展示されている伊藤若冲の桝目書き
の大作も、現在三島の佐野美術館で展示されている横山大観の富士の絵も展示されて
おり、奇妙な縁を感じます。
(伊藤若冲、樹花鳥獣図屏風、右隻)
(同上、部分)
小さな桝目を書き、その桝目ごとに彩色して行く桝目書きが お分かりになるでしょうか。
(伊藤若冲、白象群獣図)
静岡まで出掛けた折は、妻と良く寄る定番のケーキ屋さん。結局『食欲の秋』は外せない
私でした。