2014.05.10
徒然読書録~芦崎笙著『スコールの夜』
あれもこれも担当の千葉です。
読書は好きで、常時本を持ち歩く癖が付いてしまいましたが、読み方は極めて大雑把、
何かしらからだのどこかに蓄積されていれば良いという思いで、雑然と読み流します。
その意味で、読者の皆様には退屈でご迷惑かとも恐縮しつつ、ブログに読書録なる
ものを記して見るのは自分にとって有益かもしれないと思い、始めてみました。
皆様のご寛恕を請うところです。
徒然なるままに読み散らす本の中から今回ご紹介するのは、芦崎笙著、『スコールの夜』
(日本経済新聞社刊)。財務省の現役キャリアのデビュー作であることと、メガバンクに
就職した東大卒の女性がヒロインということで話題性充分のためか、昨年第5回の日経
小説大賞を受賞した作品です。
女性への偏見や差別に耐え抜いて来、経営幹部の一翼を担うようになったメガバンクの
女性キャリア一期生のヒロインが、組織の暗部を抱え込んだ子会社の整理という汚れ仕事
を任され、権力抗争の中で捨て駒として翻弄され、組織への信頼が揺らぐ中、組織の中で
生きることの意味を問い直す、という筋立て。
日経小説大賞は、2006年に始まり、これまでの受賞作は
第1回 武谷牧子著『テムズのあぶく』
第2回 萩耿介著『松林図屏風』
第3回 梶村啓二著『野いばら』
第4回 長野慶太著『KAMIKAKUSHI 神隠し』
第1回と第3回の受賞作を読みましたが(拙ブログ 徒然読書録
http://www.szki.co.jp/blog/archives/1895 ご参照方)、それに比べると、本作は
理想と現実、組織と個の葛藤というごくごくありふれた普遍的なテーマで、筆力も
見劣りし、先述の『話題性』による受けを当て込んだ受賞ではないかと勘繰って
しまいました。
次回の日経小説大賞にはもう少し期待したいものだと感じました。