2014.07.08
シリーズ・徒然読書録~和田竜著・村上海賊の娘
あれもこれも担当の千葉です。

 

読書は好きで、常時本を持ち歩く癖が付いてしまいましたが、読み方は極めて大雑把、

何かしらからだのどこかに蓄積されていれば良いという思いで、雑然と読み流します。

その意味で、読者の皆様には退屈でご迷惑かとも恐縮しつつ、ブログに読書録なる

ものを記して見るのは自分にとって有益かもしれないと思い、始めてみました。

皆様のご寛恕を請うところです。

 

徒然なるままに読み散らす本の中から今回ご紹介するのは、和田竜著、村上海賊の娘

上・下(新潮社刊)。今や芥川賞や直木賞よりも販売促進効果が高いと評判の本屋大賞

を今年2014年に受賞した作品です。



私は本屋大賞受賞よりも、NHKの1997年の大河ドラマ『毛利元就』に登場した

村上海賊の娘を連想して手にとってみました。大河ドラマでは毛利元就が、防長の

守護大名であった大内氏を下剋上した陶隆房との決戦、厳島の戦いにおいて、

村上水軍を味方につけて圧倒的な兵力の差をひっくり返して勝利しましたが、その時の

村上海賊の娘が毛利と村上を結びつける上で大きな役割を果たしました。

娘の名は加芽(カメ)で、ほっそりとした葉月里緒奈が演じていました。



それよりも少し時代が下って、織田信長の大阪本願寺攻めのハイライトとも言うべき

木津川の戦い。木津川の戦いは、初戦は毛利・村上水軍の勝利、次戦は鉄で覆った

鉄船を誂えた織田方の圧勝となったのですが、この小説はその初戦が舞台です。

 

会話の文体があまりに現代的でしっくり来ないところがとても残念なところですが、

織田側についた泉州侍の俳味溢れる言動の痛快さ、木津砦・天王寺砦の攻防と

難波海での海戦の迫力は満点です。また、家を保つために従うべき将を選び将を変え、

家を保つために闘いこともなげに命を擲つ時代に、自分や家のためでなく、仏恩の

ために命を捧げる門徒や、踏み潰されようとするその純真さのために闘う主人公・景姫

(きょうひめ)や、意気地のない器としての家の存続よりも意気地を選んだ真鍋

七五三兵衛(しめのひょうえ)の爽快さがこの小説の美点ではないかと感じました。