2016.01.08
美術展2題~ルオー展とプラド美術館展
あれもこれも担当の千葉です。
先月のことですが、東京で二つの美術展を見る機会がありました。さすが都会は
沢山素敵な美術展が開催されていて羨ましい限りです。
一つ目は、帝劇のビルの9階にある出光美術館での『ジョルジュ・ルオー展』。昨年の
うちに終了してしまったため、『今更!』とのお叱りも受けてしまいそうですが・・・。
『出光』と言えば、本屋大賞を受賞し、今年映画も公開される百田尚樹氏の小説、『海賊
と呼ばれた男』のモデルとなった企業ですね。
この出光美術館は、9階でエレベーターを降りたところから感動モノです。型枠の中に
砂土などを入れて突き固めて行く『築地塀(ついじべい)』にまず目を奪われてしまい
ます。得も言われぬ味わいですよね。当社で増築させて戴いた『沼津倶楽部』さんの
宿泊棟で当社もチャレンジしました。また、建て替えられた日本平ホテルさんの解放感
一杯の広いロビーにも築地塀が使われていて素敵です。
ジョルジュ・ルオー(1871-1958)は、ステンドグラス職人から画家として独立
しましたが、彼の画業の初期にあたる時期には、第1次世界大戦の前後にあたり、
社会の矛盾を鋭く抉るような画題が多く見られます。貧しさからモデルを雇う余裕が
なく、娼婦を部屋に招き暖と休憩をとらせる代わりにモデルとなってもらった、との
説明書きもありました。この時期の『ミセレーレ』と呼ばれる銅版画集で名を上げます。
そして中学の美術の教科書以来お馴染みの、これぞルオーとも言うべき宗教画
は、父親の死と第1次大戦後の混沌とした社会の中で取り組んだ連作油彩画の
『受難』シリーズに多く見られます。82点の木版挿絵用の原本を、1年余りの短い
間に油彩に仕上げたものですが、この過程でルオーの特徴ともなった絵具を盛り
上げる手法『マティエール』が確立されたと説明がありました。
画業の後期・晩年にはこのマティエールは更に磨きがかかり、下の左側の絵などは
絵具の厚みが優に1センチくらいありました。
題に『洋子/Yoko』とあって見てみると、モデルは日本人で、ルオーの友人であり
ルオーの絵のコレクターでもある福島繁太郎の娘さんだそうです。日本とも浅からぬ
縁があるのですね。
どんな素材に描いてあるのか見て行ったところ、驚いたことに、水彩も油彩もグワッシュ
も、殆どが紙に描かれキャンバスで裏打ちされたものでした。また、陶器の絵付けをした
ものも展示されており、これもまさに『ルオー』でした。
見終わってロビーに出ると大都会の夜景を楽しめるラウンジ。なんとも素敵な美術館
です。
美術館を出ると、階下にはバカラ・ショップ。
図々しく中に入って目の保養をさせて戴きました。さらに嬉しいことにバカラ・グラス
でカクテルが飲めるバカラ・バーまで!絵に、築地塀に、夜景に、バカラにと、何重
にも楽しませて戴きました。
もう一つは三菱一号館美術館5周年記念の『プラド美術館展』。こちらは今月末の
日曜日まで開催中です。
なんと私がポスターに登場?
実はこんな楽しい仕掛けでした。
プラド美術館の収蔵品は、スペイン・ハプスブルク家はじめ、歴代スペイン王の財宝
が中心となっています。ベラスケス、グレコ、ゴヤと言ったスペインが誇る画家の他に、
ハプスブルク朝・神聖ローマ帝国皇帝の頃はオランダ・フランドル地方も領地だった
ことからルーベンスまで含まれています。今回は14世紀から19世紀までの『小品』を
中心に時代順に展示されていました。またしても何に描かれてあるのか見ていったところ、
油彩にしてもテンペラにしても最初は板に描かれていましたが、16世紀後半になって
キャンバスが登場します。そしてそれはやはりイタリアからでした。
まだ月末まで開催中ですので、栄光のスペインの時代の素敵な絵たちをご覧に
足をお運びになられてみてはいかがでしょう。