2015.11.21
ふるさと納税~ゼロ・サムからプラス・サムへ
あれもこれも担当の千葉です。
本年度の税制改正で、ふるさと納税の減税対象となる寄付金額の上限が約2倍に
拡大したためか、ふるさと納税が過熱気味とのニュース報道がありました。寄付金
獲得の為に、寄付をしてくれた方へのお礼の品をより魅力的にしようと、各自治体が
しのぎを削る競争をしているようです。
長野県阿南町では、1万円の寄付で、他の多くの自治体が10㎏が多い中で、特産の
お米を20㎏プレゼントするとあって人気沸騰、昨年度は税収のほぼ半分の2億円余り
の寄付が集まったといいます。
寄付とはいえ、2,000円を超えた部分(所得や控除・住民税率などによって上限の違い
はありますが)は住民税や所得税から控除されるため、寄付する側からみると、2,000円
の負担で御礼の品が『買える』といった発想で、どの御礼の商品が魅力的なのかネット
で比べて選ぶ人が増えている、との報道も記憶にあります。
最近は、行政サービスを提供していながら結果的に住民税を地方に『とられてしまう』
ことになるのを防ごうと、都会も寄付金獲得に力を入れるところが出てきているそうです。
なにか、住民税の奪い合い競争をしているようで、すっきりしないものを感じてしまう
のは私だけでしょうか。
最近では、総務省が高額な返礼品や換金性の高い返礼品の自粛を求める通達を出した
影響からか、返礼品の高額化ばかりではなく、バラエティ豊かな多くの選択肢を用意する
ことで寄付を惹きつけようといった工夫も出てきているようです。
また、静岡県内でも静岡市、伊東市、御前崎市、長泉町、小山町の5自治体は、返礼品を
用意していません。長泉町は粋な取り組みをしています。寄付金で街のシンボルの
クレマチスを植え、写真にとって寄付者に送り、見に来てくれるように促しているそうです。
とても優れた見識だと思います。
努力をした者が報われる、という点で努力を促すことに繋がる。都会と地方の税収の
再配分に寄与する。プレゼントに使うことでその地域の特産品や魅力を全国に発信
できる。プレゼントに使うことで地域の特産品の育成・支援に繋がる。寄付金を活用して
地域の活性化を図り住民サービスを向上させる。そもそも自分の生まれた町、育った
街を応援することができる。色々なメリットが考えられます。
しかし、全体としてみると2,000円の自己負担分が税収アップに繋がる面はあるものの、
その2,000円を超えて寄付を募るためにプレゼントや事務などのコストを掛けてしまったら、
全体としては税収減となってしまうのではないかと心配です。(住民税全体に比べたら、
ふるさと納税分など心配に及ばない額なのかもしれませんが。)
元総務大臣、元鳥取県知事の片山善博慶大教授が、課税権のないNPO法人への寄付
と課税権のある自治体への寄付のバランスを失している点を指摘し、『他人のふんどし
での寄付』と糾弾したり、識者の中でも喧々諤々の一方で、制度としては拡充されるという
状況を見れば、とても難しい問題であるようです。
せめて、全体が変わらない中での住民税の奪い合いといったゼロ・サム・ゲームや、
コストの分だけマイナス・サムになってしまわぬよう、寄付者のメリットだけでなくトータル
としてのメリットを増やし、プラス・サムの仕組みになることを祈っています。